歴史のトリビア 伝説の食べられる衣

日本の長い歴史において、食と言うものは切っても切り離せない関係があります。
しかし、その中でもトリビア級で、今では知る人ぞ知る逸話も残っているのです。
時は江戸時代の江戸城、出雲の国の殿様であった松平治郷公(不昧公)は、江戸城の新年の儀式に当たって、将軍様にアッと驚くものを献上しようと去年から家臣たちに出雲の国の名物で何か良いアイデアは無いかと聞いたところ、一人の家臣が1枚の黒い羽織を持って来たのです。
そして、殿様の前でその羽織をちぎって口の中に入れ飲み込むと、殿様と家臣一同は「アッ」と驚いたのです。
驚いた殿様は、それは何かと尋ねると、「これは十六島海苔(うっぷるいのり)と呼ばれる岩ノリで、出雲の十六島地域で育つ岩ノリなのです」と答えたのです。
そうして、この海苔で作られた羽織は江戸まで運ばれ、殿様は将軍様やその他の大名たちの前で羽織をちぎって食べてみせて驚かせ、この年の新年の祝いの席で一躍人気者になったのだそうです。
ちなみに、この十六島海苔は、今でも出雲地域の贅沢な高級食材であり、特にお正月のお雑煮に使われる事が多いのです。